コラム
2024.08.02
AIをイベントマーケティングにどう活用するか【海外事例】
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消費者の購買行動においてバーチャル(オンライン)とリアル(オフライン)が当然のように融合する昨今、小売業界において「実店舗ならでは」「ECならでは」の購買体験がそれぞれ追求されるようになっています。そのうち、後者のECにおける購買体験向上を目的に活用される手法のひとつが、ソーシャルコマースです。
ソーシャルコマースとは、広義にはソーシャルメディア内でユーザー同士が商品を売買する販促・販売の手法、狭義には個人や企業などがSNSプラットフォームで商品を販売する手法をいいます。
これまで商品を販売する企業にとっては、SNSは投稿を通じて商品やサービス、ブランドの認知および興味関心を獲得する場で活用するマーケティングツールでしかありませんでした。しかし近年、SNSの写真・動画投稿やライブ配信から直接商品購入ページに遷移できるようなケースが登場。いわゆるライブコマースに特化したプラットフォームも盛り上がりを見せています。
このように、SNSは今や商品購入前だけでなく、「購入」フェーズにおいても重要な役割を担うようになっているのです。
ソーシャルコマースプラットフォームの事例としては、Instagramのアカウントを自社のECサイトに連携できる「ショップ機能」や「商品タグ機能」が代表的です。さらに、2022年7月には世界的なECプラットフォームShopifyがYouTubeと連携し、YouTubeでのライブ配信に商品タグを付けたり、そのままShopifyで購入したりできるライブコマースサービスを展開することを発表しています。
これらのほかにも、海外ではユニークなソーシャルコマースの事例が多数見られます。その中から注目の2事例をご紹介しましょう。
新興のD2Cブランドが多数出店するロサンゼルス発のファッションECサイト「Verishop」は、そのSNS機能が特徴的です。
(参考:Verishop Webサイト)
各出店者は写真や動画の投稿を通じて、商品紹介やブランドストーリーの発信が可能。また、ライブ配信で商品の詳細な質感、特徴やおすすめのスタイリングを紹介したり、視聴者からのリアルタイムのチャットに応えたりする形で接客したりできます。さらに、販売する各商品にはクリエイター(インフルエンサー)による商品レビュー動画を付けることも可能です。
ユーザー同士のコミュニケーション機能も充実しています。ユーザーは「ショップパーティ」と呼ばれるコミュニティを自由に立ちあげて、お気に入りの商品やブランドについておしゃべりできます。
従来は実店舗でしかできなかったリアルタイムでの接客を、ライブ配信を活用してオンライン上で再現し、購買体験を改善している事例です。また出店者がSNSの投稿という形で情報を発信することで、ブランドの世界観が伝わりやすくなっています。そして何より、プラットフォーム内でのコミュニケーションの楽しさを演出しているのも、ソーシャルコマースならではだといえるでしょう。
北米を中心に展開する食料品の買い物代行・即日配達サービスInstacartでは、料理系WebサイトやTikTokと連携して買い物ができる新機能「Shoppable Recipes」を提供しています。
例えば、料理サイト「Delish」や著名なライフスタイル誌「Country Living」のWeb版など、ハースト・コミュニケーションズ社の主要メディアに掲載されているレシピの材料一式を、ユーザーはワンクリックでInstacartのカートに追加可能。そのまま購入し、即日配送してもらえます。TikTokのほうでは、クリエイター(TikToker)が料理動画を投稿する際、「Tasty」など対象のレシピサイトに掲載されているレシピとリンクさせれば、視聴者はボタンひとつで必要な材料をInstacartで購入できるようになります。
特にTikTokはSNSの中でも料理系コンテンツの需要が高く、話題のレシピが投稿された直後にはスーパーなどで材料が品薄になるなど、消費者行動に大きな影響を及ぼすことがわかっています。「Shoppable Recipes」はそうした背景を踏まえた新サービスであるといえるでしょう。
本来ECで商品を購入した場合は商品を選んだり、購入した商品を待ったりする時間がかかりますが、この機能では気に入ったレシピの材料を即購入、即日配達という流れが実現されています。利便性と共に新しい食事体験、料理体験の楽しさを提供している好事例です。
このようなソーシャルコマースを活用する第一の利点は、企業と消費者双方にとっての利便性です。動画コンテンツの投稿やライブコマースにより、企業は商品の魅力をよりわかりやすく伝えられるように。また消費者が商品の認知からシームレスに購入まで行えるようになったことで、離脱を防げるようにもなりました。
さらに、コミュニケーションを通じた「楽しさ」という体験価値を提供できる点も見逃せません。企業と消費者、消費者同士のインタラクティブなやり取りを通じ、消費者は「特定のコミュニティに参加している」という特別感を得られるでしょう。この体験が、顧客ロイヤリティの向上につながると期待できます。
なお、今回はB to Cの事例を紹介しましたが、昨今ではC to Cのソーシャルコマース、ライブコマースプラットフォームも勢いを見せており、新たなコミュニティ形成の場になっています。例えば「Z世代版QVC」ともいわれる「NTWRK」(参考:NTWRK Webサイト)は、クリエイターによるアート作品や著名人とのコラボによる限定スニーカーなどを、オリジナルコンテンツのライブコマースで販売しています。またコレクターズアイテムに特化したC to Cのライブコマースプラットフォーム「Whatnot」 (参考:Whatnot Webサイト)は、ソーシャルコマースの多様化を象徴する事例のひとつです。
今後、ソーシャルコマースを含むECでの購買体験が国内外でどのように発展していくのか、引き続き動向に注目です。